アメリカの約束
最近、本に埋もれています。その中から特に印象に残っている本をひとつ。

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「スリー・カップス・オブ・ティー」 グレッグ・モーテンソン デイヴィッド・オリバー・レーリン著 サンクチュアリ出版

ニューヨークタイムズのベストセラーリストに154週連続でランクインされたことも知らず「とてもいいから読んだら」・・・と先に読んだKUROからリレーされた本で
ジャンルも、その中身についても何の前情報もなく、カバーもその中のイラストもとても好みだわ♪くらいの動機で読み始めた私。

とてもシンプルな解りやすい言葉と短いフレーズで書かれているので、すぐに読めるから、たくさんの方に読んで欲しいなーと思う。

「1杯目はよそ者、2杯目はお客、3杯目は家族」 ・・・・ 表紙に書かれたこの一言に、テーマが集約されている。

登山家で、看護師でもあり、退役軍人のグレッグ・モーテンソンさんが、エベレストよりも難関といわれるK2登山に“失敗”
高山病にかかり、体力の限界がすぐそこまでやって来ていたとき
登山隊のポーターをしているおじいちゃんが、彼を見つけ「アラー・アクバル!(神は偉大なり!)、よかった無事でしたか」と
背中をたたき、チャイを入れてくれたところから、このノンフィクションは始まる。

道に迷って辿り着いたその村は、文明の辺境地帯。
文明の利器の届かない貧しい村ながら、客人を熱烈歓迎する習慣を持ち、熱心なイスラム教徒の暮らす小さなコルフェ村。
異教徒のアメリカ人を、家でいちばん上等なキルトで眠らせ、焼きたてのチャパティとラッシーでもてなし、貴重な砂糖をたくさん入れた甘いお茶を淹れ
体の弱っている旅人の体調を気遣い、彼のために村の大切な栄養源でもある大きな羊をつぶし、ふるまってくれた村人たち。
決して彼らが裕福だからではない!
子供たちは栄養失調で、病気を抱えている家族も多く、お医者さんまでは、歩いて1週間かかるような貧しい村なのに・・・。

彼らに助けられたことの恩返しに、と
自分が持っていた登山道具や薬を村人たちにプレゼントし、看護師としての知識を生かして、村人の怪我や病気をなおす手伝いをしながら
その村でしばらく過ごしたグレッグさん。
そんな生活の中で、さらに彼らの優しさと温かさに触れ、今度は僕の番だ・・・と貧しい村に「学校をつくる」と約束をする。
それもたったひとりで。 



彼独自の方法で“世界中の大きな誤解”との闘いに挑み(=それはイスラム原理主義者への挑みでもあり、アメリカ社会への挑みでもあり)
信念を持ち続け、支援を訴え続け、コーフィ村の小学校を皮切りにして、現在では100校の学校を設立し、運営し
そして今も 【教育を通して平和を促進すること】 を目標に、活動を続けているそう。

相手を理解し、その考えを尊重し、心を通わせる。アメリカ政府のように武力で押さえ込むのではなく、心を通いあわせて築きあげる信頼関係。

素晴らしい。本当に素晴らしい信念。 そして彼をずっと支え続けている奥様のことも心から尊敬します。

戦闘地域でもあり、情勢が不安定なパキスタンやアフガニスタンでは
何度も危険な目に遭い、タリバンに拘束されたり、危険な目にあったり、脅迫を受けたりしたこともあり
9・11の直後は、さすがに彼も仕事を続けるべきか迷ったそう。
でも、米国務省から避難を要請されたとき、自分の仕事をやり遂げたいと奥様に伝えると
「あなたを愛してくれる人たちと一緒にいるのね。
今は、彼らがこの事態を乗り切るのを手伝うために、あなたが実際に彼らと一緒にいなければいけない最大の瞬間かもしれないわね」
-------とおっしゃったそう。 人を信頼する ということの重みを感じる言葉です。

9・11のその日、パキスタン北部のクワルドゥ村で開校式が行われていました。
シーア派のムッラー(宗教指導者)サイード・アッバース氏が、その開校式の祝辞の中で述べた慈悲に満ちた言葉を読んだとき
私は自分の無知と偏見を、とても恥ずかしく思いました。

 「我々の学校の創立を祝うこの日、アメリカで嘆き苦しむ人々の悲しみにも思いをはせましょう」
 「アメリカにお願いしたい。ぜひ我々の心を見てほしい」
 「我々のほとんどはテロリストではなく、善良で素朴な人間なのです。我々の国が貧困で苦しんでいるのは、教育を受けられなかったからです」
・・・と。ムッラーの愛に満ちた言葉はここではすべて紹介できないのですが、本で確かめていただけたらと願います。

そして涙の止まらなかったフレーズを “ニューヨークという村”の章からご紹介( ネタバレなので、数行反転しておきます )
「開校式の後、クワルドゥ村の未亡人たちが僕とマカウンのまわりに続々と集まり、お悔やみを述べてくれた。
そして、僕たちに卵を差し出し、遠く離れた“ニューヨーク村”で夫を亡くした女性たちに「自分たちのお悔やみのしるしとして渡してほしい」と頼むのだった。
 生みたての卵が、僕の手の中で震えている。割れないようにやさしく包み、子どもたちのことを考える。
・・・・・(中略)・・・・・この世界にあるものは、なんて壊れやすいんだろう。」
 
イスラムの方々の優しさに、いつまでも涙が止まりませんでした。

9・11後や、またこの本が出てから、グレッグさんのお宅には、同胞であるアメリカ人からの中傷や脅迫状が大量に送りつけられるというのに…。

彼らの活動について、新聞記事を読んだ海軍大将に招かれたグレッグさんが
ペンタゴンでラムズフェルド国防長官に会い、軍事政策担当者に活動の説明をした時のエピソードは、苦笑せずにいられなかったです。

以下 “ラムズフェルドの靴” の章から引用( ネタバレなので、ここも数行反転しておきます )
 「海軍大将に案内されて、ぴかぴかの大理石の廊下を通って、国防長官の執務室に向かった。
印象的だったのは、すれちがう人と全然目が合わなかったことだ。
 みんなノートパソコンを抱えてせかせか歩き、次の目的地へまっしぐらに進んでいる。僕に目を留める時間もないらしい」
 「国防長官の執務室では、誰も椅子をすすめてすれなかった。
パキスタンで身分の高い役人と会うとき、たとえどんなに短い時間でも、少なくとも椅子とお茶はすすめてもらえたのに。」


無関心は無責任。

そして、先進国の子供たちには、ごくごく当たり前な【学校に通う】ということも
パキスタンやアフガニスタンの子供たちからみたら【格別なこと】であるという現実を忘れずにいよう。

私にも何かできることがきっとあるはず。そう思って、サボッていたブログ・・・稚拙ながら私なりに、一生懸命書いてみました。

イスラムのテロリズムが過去のものとなる日が早く訪れますように・・・。     まずはここから 1ペニー募金

*素敵な記事を見つけました 

蛇足ながら・・・巷では、i-padの予約開始に長蛇の列・・・というようなニュースも流れる中、「本」の紙とインクのにおいの強いソフトカバーのこの1冊は
久々に読書という行為そのものを楽しめた一冊でもあり。

スリー・カップス・オブ・ティー公式サイト
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by shiro_taka_n_n | 2010-05-19 18:45 | 読書感想文
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